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​詩のPage

バニヤンの樹

 

 

雑草や灌木に隠された細い道の奥に
巨大なバニヤンの古木があり
その根元には小さな祠があった
野生の桑の樹が広がる 林中で
ほとんど忘れられたまま
その樹は樹根を何本も大地に下ろし
それぞれがまた巨樹に成長していた
その樹の洞には大きなトカゲが棲んだ

その樹の洞にはある時イランから逃げて来たという
仏教徒の青年が隠れるように棲んでいた事があった


その地がガンダーラと呼ばれたころ
その樹はそこに植えられ
人々を夏の太陽から守り
その下に置かれた土壷の水で
人々はのどを潤したということだ


時を経てその地には別の宗教が広まり
かっての宗教は邪教として退けられ
その樹も狂信的な宗教者たちから疎まれるようになった


ある夜、明か明かと火の手が上がのを見た
と人々は言った
ある日その樹を訪れたひとは
そこに黒々と巨大な炭のミイラになった
バニヤンの老木の死骸を見たのだ


そして
黒々と焼けこげた死骸のひろがる
その端しの方にちいさなバニヤンの若木たちが
人間の目から逃れて幾本も生えていた

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