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Works

「飛行する種子」

わたしは食べる・・・・・・・・・
わたしは殺し食べ生きる・・・・・・そして
見る・ ・ ・そして歌う・ 生を
授ける草・ ・生を授ける魚・
そして 肉・ そして 時間・・・・
・・すぎゆくこと
わたしは過ぎゆく・・・


1992年8月の彼女のカタログには、彼女の絵と同タイトルの「飛行する種子」という
詩がのっている、読んで思わず「うーん」と言い、絵を見て思わず「うーん」とうなってしまった。

詩そのままの絵、発想が野方図というか、自由、素朴というか、ストレートな
彼女自身の生き方(Passing)を出しつくしている。

日常のできごと、ある時間帯で心を通りすぎたイメージが、そのまま日記のように絵になっている。
宇宙空間を飛ぶ飛行船のような巨大な種子を描いた「飛行する種子」、落書き
のようなタッチの『雨のたんじょうび」など、、、

それは具象とも抽象ともシュルレアリズムとも言えない、

そうしたカテゴリーなど意にも介さず、さまざまな手法を自由に使って、あるとき擦過する

プライヴエート・イメージをあたかも世の重大事のごとく拡大して描く、

しいて言えばフィギュラシオン・ナラテイヴ(物語り的具象)という美術用語が田島和子の絵に

あてはまるだろう。

クールで日常的、だが軽微なユーモアとアイロニーのうちに生きる事の痛みをひそかに盛り込み、

それらすべてを広大な時間の流れに浮かぶできごとと感じさせる。

そのあたりに田島和子の作品群の独自の持ち味があるのだ。

日向 あき子(詩人・美術評論家)

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